HEALTH健康
子どもの体と心の健康を育む「幼児食」のポイント
- 2023.05.12
- 健康
離乳食卒業後、大人の食事への移行段階として、子どもの健やかな成長を支える「幼児食」。
「子どもの食生活の基礎を育むもの」としてその大切さを認識してはいても、具体的に何をどう気をつけてよいのかわからず不安もありますよね。
そこで今回は、幼児食の役割やポイントなどの基本的な考え方をご紹介します。
離乳食卒業後に始める「幼児食」とは?
幼児食とは、離乳食を卒業した時期の子どもに食べさせる食事のことをいいます。離乳食完了期が12か月から18か月であるため、幼児食はそれ以降のおおむね1歳6か月から6歳頃までが該当します。大体その時期までに歯が生え変わり消化機能が大人と同程度まで発達するとされているため、大人の食事に移行するまでの準備段階ともいえます。
幼児食の期間は長く、前期と後期では子どもの発達度合いは全く異なります。また同じ年齢の子どもでも成長のスピードは一人ひとり違うため、一口に「幼児食」と言っても、子どもの食べ方をよく観察しながら発達に合わせて変化させていくことが重要です。
さらに、食を通して心と体の発達を支えていくために、食事の時間も含めた規則正しい生活習慣の形成や、食べることが楽しいと思える経験づくりなども必要となります。
離乳食との違い
幼児食が離乳食と大きく違うのは、「歯で咀嚼する」「食事のみで栄養を摂る」という2点です。
離乳食は、母乳や粉ミルクから少しずつ食事へ移行する時期。歯茎でパクパク食べられるようになれば完了とされています。最初の奥歯(第一乳臼歯)が生えてきて咀嚼できるようになったら幼児食に移行します。
離乳食から幼児食への移行は、卒乳とも関連します。離乳食の段階では母乳や粉ミルクも並行して与える場合が多く、栄養の一部はそちらからも補てんできます。しかし離乳食の完了期には卒乳していることが多いため、幼児食では食事のみでしっかりと栄養を摂れるようにする必要があるのです。
幼児食で気をつけるべき5つのポイント
大人の食事への移行段階であり、食習慣の基礎をつくるためにも重要な幼児食。食事そのものに気を付けるのはもちろん、食事を含めた生活リズムを整えることが大切です。
ポイント1:生活リズムを整え、規則正しく1日3食与える
1日の中での「食事」「遊び」「睡眠」のリズムをつくることが重要です。おやつ含む食事の時間をある程度決めておくことで、寝る時間や起きる時間などの1日の生活の流れが作りやすくなります。
また、幼児食の時期に大人と同じく1日3食の食習慣をつくることも大切です。食が細くて3回の食事だけでは心配という場合は、おやつなどでカバーするのも良いでしょう。1回の食事で必要な栄養を確保できるよう、食事前に外遊びでしっかり体を動かすなど、できるだけ空腹の状態で食事ができるようにしましょう。
ポイント2:栄養バランスを整える
幼児食は離乳食と違い、母乳や粉ミルクで栄養を補てんできなくなる分、食事での栄養バランスに配慮する必要があります。主食・主菜・副菜を揃えた食事にすると、栄養バランスが整いやすくなりますよ。
ポイント3:未発達な体に合わせた味つけにする
成長過程の子どもの体では、大人と同じ食事をすると健康に良くない場合があります。詳細は後述しますが、強い味、濃い味の食事は健全な味覚形成に影響を及ぼす可能性も高くなっています。
塩分や糖分が過多な食事、脂肪分が多い食事、辛い物や刺激物などが該当します。それらの食事は、きちんと消化・吸収ができずに消化不良を起こしてしまったり、肥満や高血圧などの健康被害にもつながってしまう場合も。子どもの体が未発達であることをよく理解して、成長に合わせた味つけの食事を与えるように注意しましょう。
ポイント4:発達に合わせた調理方法にする
幼児食はおおむね1歳半〜2歳までを前期、2歳〜3歳までを中期、3歳〜6歳までを後期として3つの発達段階に分けられます。
まだ歯が生え揃っていない前期では、前歯で噛み切れるようひと口大、うす切りの形状にし、煮る・炒めるといった調理方法にするのがよいでしょう。
中期は、奥歯で潰せるやや歯ごたえのあるものが食べられるようになるため、焼いたり揚げたりという調理法も可能です。
後期には大人と同じ硬さのご飯が食べられるようになります。さまざまな食感の食事で、食べる楽しさを感じてもらうことを意識しましょう。やわらかいものだけでなく、噛む力を育てるメニューとすることも必要です。
ポイント5:食べることが楽しくなる経験を
幼児食には、子どもの食への興味や楽しさを喚起する役割もあります。家族みんなで食卓を囲んで食事のマナーを教えたり、食事の買い物や料理を一緒にしたりすることで、食の大切さや楽しさを伝えていきましょう。
子どもの味覚を育てる「幼児食」の役割
胃腸機能の発達や永久歯への生え変わりにより、大人と同じ食事をするための「体の準備」が整うのが5歳から6歳くらいの時期。一方で「味覚」は、それより少し早い3歳までに出来上がると言われています。
「幼児食」と「味覚形成」の関係
親が子どもの自我を感じるのは2歳前後に訪れる「イヤイヤ期」が一般的ですが、実は味覚の判断は5、6か月の時期から始まっています。離乳食や幼児食を拒否されたという経験がある方も多いのではないでしょうか。頑張ってつくったものを食べてもらえないとショックもありますが、それは子どもの中に味覚に対する判断基準ができ始めている証拠でもあります。
そして、子どもの脳が大人の脳の8〜9割程度まで成長するとされているのが3歳頃。その時期までに強い甘味や塩味、食品添加物等からくる強い味を覚えてしまうと、それが脳にインプットされ、その先もさらに強い味、濃い味を求めるようになってしまいます。
そもそも子どもの味覚は大人よりもずっと敏感であるため、薄味でも十分食材のおいしさを感じ取ることができます。幼児食の役割は、そんな繊細な子どもの味覚を守り、育てていくこと。味覚が敏感で、脳が発達段階にある3歳までの時期に味つけに配慮した幼児食を与えることで、素材本来のおいしさや、繊細な味の違いを敏感に感じ取ることができる豊かな味覚を育むことができるのです。
幼児食で子どもの「正しい食への判断基準」づくりを
子どもは普段食べているものの中から、「おいしい」「おいしくない」、「いる」「いらない」の判断基準を形成していきます。家庭で出される薄味の食事が当たり前になっていれば、味の濃いお菓子などを出されたとしても、子ども自らの基準で「いる」「いらない」の判断をできるようになることが期待されます。
子どもが大きくなるにつれて、食事すべてを親がコントロールすることは難しくなります。しかし幼児食を通じてきちんとした味覚を形成することで、「正しい食への判断基準」づくりにつながるのです。
まとめ
子どもの正しい生活習慣の定着や味覚形成など、様々な役割を持つ幼児食。子どもの心身の健やかな成長のためにも、正しい知識を身につけながら幼児食づくりをしていきたいですね。
一方で、いくら「幼児食」とは言っても、大人の食事と完全に切り離して考えることは難しいのも事実です。子どもの食事にいくら気を遣っていても、大人の食習慣や生活習慣が乱れていては、子どもに何らかの影響を与えてしまう可能性があります。
幼児食づくりをきっかけに、子どもと一緒に規則正しい生活習慣を身につけたり、大人の食事も薄味にすることで、家族みんなの健康にもつながっていきます。味つけにギルトフリー調味料などを活用しながら、親子の健康と笑顔を守る食卓にしていきましょう。