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“四季”を取り入れた食事で心も体も健康に
- 2025.06.11
- 健康
私たちの体は季節の移り変わりに応じてさまざまな変化を見せます。そんなうつろいやすい体調に寄り添ってくれるのが季節の食。季節の食を楽しむことは、子どもの成長や情操教育にとっても重要です。
今回はそんな日本の四季と食のつながり、そして子どもの食事との関係を見ていきます。
四季とつながる食文化「旬」と「行事食」
「○○が美味しい季節」という言葉が自然に飛び交うように、私たちは普段から季節と食の楽しみを結びつけて過ごしています。また節分の恵方巻きなど、単においしさだけでなく季節の行事に絡めて食で縁起をかつぐ風習があるのも、日本の食文化の特徴です。
季節と関係する日本の食文化について、四季と紐づく「旬」、そして「行事食」の2つを解説します。
「旬」とは

食べ物の「旬」は野菜や果物、魚類などに対して用いられ、その食材が大量に収穫でき、最もおいしい時期のことを指します。
旬というのはもともと冷蔵・輸送手段が発達していなかった時代に生み出された食文化です。現代ではハウス栽培や海外からの輸入によって、旬の時期のみに入手できる食材は減ってきています。
しかし季節ごとの気温や水温といった自然のメカニズムによってもたらされる旬の食べ物は、そうでない時期に収穫された食材と比べて栄養価やおいしさが大きく異なるとされています。また旬の食材は収穫量も多いため、価格が安くなるのも魅力です。

「行事食」とは

「行事食」は季節ごとの行事やお祝いの日に食べる特別な食のことをいいます。「旬」が食材そのものを指すのに対し、行事食は食材だけでなく料理を指すことも多くなっています。
行事食の目的は「家族の幸せや健康を願う」こと。そのため行事食は一つひとつに意味が込められています。例えばよく知られているのは正月に食べるお節料理。「まめに暮らせるように」の願いを込めた黒豆、「喜ぶ」「子生」にかけた昆布巻きなど、縁起のよい食材が使用されています。また冬至の日に食べるカボチャなど、栄養価の高い旬の食材が用いられることが多いのも特徴です。
季節の食の健康への効能
旬の食材は単に栄養価が高いだけでなく、その時期に起こりやすい体調不良をカバーする効能があるといわれています。季節の変化に伴う心身の不調への効果が期待される旬の食材や、それを取り入れた行事食の例を見ていきましょう。
新陳代謝が活発になる「春」

気温が温かくなり新陳代謝や内臓の動きが活発化する季節。同時に新しい環境でストレスを受けることも多くなっています。そんな春の旬の食材は「春の皿には苦味を守れ」との言葉にもあるように、山菜をはじめとする苦味食材です。苦味食材は新陳代謝を活発化し、胃腸の働きを促すとされています。
夏バテなど体力を消耗する「夏」

猛暑による体力の消耗、熱中症などの不調が起きやすい季節。身体に溜まる熱を冷やし、夏バテを防止する効果のあるミネラルが含まれたスイカやきゅうり、トマトといった夏野菜が旬の食材です。
行事食である「土用の丑」で食べる鰻も夏の食べ物。鰻自体の旬は実は夏ではないとされていますが、暑い時期を乗り切るために鰻で体力をつけるために、夏の行事食とされています。
朝晩の冷え込みが風邪につながる「秋」

夏が終わり徐々に気温が下がっていく季節、乾燥や朝晩の冷え込みによる風邪防止が求められます。皮膚や粘膜を強化するカロテンが多く含まれるニンジンや、胃腸の働きを高める根菜類が旬の食材とされています。
「実りの秋」といわれるように、その他にもきのこ類や秋刀魚、柿など、海産物から果物、穀物まで旬の食材が豊富な季節となっています。
寒さを乗り切る必要がある「冬」

寒さによる体調不良を起こしやすい冬は、風邪予防となるビタミンCが豊富な大根やみかんが旬の食材となります。また白菜や小松菜などの冬野菜は寒さを乗り切るために糖をたくわえているため、体温保持効果・血行促進に効果があるとされています。
先述した通り、冬至に食べる行事食・カボチャは、風邪防止に効くとされています。また冬至には冬の旬の食材である「柚子」を用いた無病息災を祈る行事食「柚子湯」に入る風習もあります。
正月料理で疲れた胃腸を休めるための「七草粥」も旬の食材を取り入れた行事食の1つ。一年の邪気を払い万病を防ぐといわれる願いが込められているだけでなく、ビタミン豊富な春の七草を摂取することで健康への効能も期待されます。
子どもの食事に季節の食を取り入れるメリット
季節の食を食卓に取り入れることは、子どもの成長にもメリットがあります。保育園や学校の給食で旬の食材、行事食を取り入れるなど、季節の食による子どもの食育も進められています。
子どもの体づくり・味覚形成を促す
旬の食材が持つ優れた栄養素は、季節の変化による体調不良を支えるだけでなく、子どもの強い体づくりにも欠かせません。
また旬の食材は他の季節に収穫されたものと比べて風味が豊かで旨味が強いのが特徴です。必要以上に味付けをしなくてもおいしいため、素材本来の味を味わうことは子どもの味覚形成にもつながります。
日本の食文化の理解と継承につながる
普段何気なく取り入れている旬の食材や行事食。しかしその効能や由来を改めて聞かれると、大人でもしっかりと答えられない人は多いのではないでしょうか。
特に行事食は日本の古くからの風習と結びついたものが多くなっています。その由来やそこに込められた願いを大人から子どもに伝えることで、日本の食文化を次世代に継承していくことが期待できます。
子どもの豊かな感性を育む
自然の色合いや風の感触など、季節を五感で楽しむ“季節感”は、日本人特有の情緒や感性といえるでしょう。味や香り、彩りで季節を感じさせてくれる「食」は、子どもの情操教育においても重要な意味を持ちます。
食は人間の体と密接に関わるものであり、子どもにとっては強く印象に残る体験です。旬の食材や行事食を積極的に食卓に取り入れることで、家庭でも季節を感じることができ、季節の変化を感じ取る繊細な感性や豊かな心を体感的に身につけていくことができるのです。
季節の食を通じて家族間のコミュニケーションが生まれる
家族の食事の本質は“楽しむこと”。季節に合った食材を取り入れ、それを子どもに伝えることで、食を通じた楽しいコミュニケーションが生まれるきっかけになります。
楽しい食事体験は、子どもの食への関心の高まりを高めていく上でも効果的。季節ごとの行事食を食べたり、一緒にスーパーに行って旬の食材を選んだりと、子どもと季節の食を楽しみながら食への興味を喚起し、将来的に自分自身で食材を選ぶ力につなげていくことが大切です。
食卓に季節感を取り入れるポイント
四季の食を取り入れた食事というと、彩り豊かな和食がイメージされるかもしれません。しかし毎日の料理でさまざまな食材を用意して、見た目にもこだわって…となると大変でしょう。特に子どもは好き嫌いが激しいケースも多く、旬の食材を使ったとしてもおいしく食べてくれるとは限りません。
ここでは、子どもと一緒に季節の食を無理なく楽しむポイントを紹介します。
普段の子ども用料理に季節感をプラスする

子どもは目新しい食材よりも、普段食べている料理の方を好む傾向があります。カレーやハンバーグなど、子どもが好む普段のメニューに旬の食材をプラスすることで、子どもも違和感なく季節の食を受け入れることができるでしょう。
また行事食に取り入れられている食材はいわゆる大人好みのものも多く、子どもは敬遠しがちです。そんなときは行事食を子ども用にアレンジして食べやすくするのもおすすめ。近年ではカジュアルなお節料理など、子どもも大人も楽しめる行事食も多くみられます。行事食に込められた思いを伝えつつ、一緒に楽しく食べられるようにアレンジしてみてはいかがでしょうか。
日々の中で、季節の食を意識できる会話をする

季節の食が子どもの情操教育にもとつながるというと、「子どもの心に残るようなことを伝えないと」と気構えてしまうかもしれません。しかし難しく考えなくても、日々の生活の中で少し意識して、食と季節に関する会話をするだけでも十分です。
節分やひな祭りなどを楽しく祝ったり、「一緒にスーパーで買った旬の野菜を使おうね」と伝えたり、自然な形で季節と食のつながりを伝えていきましょう。日々の体験が子どもの記憶に残り、将来的な食への関心につながっていくはずです。
子どもが主体的に食に関わる機会をつくる

食を子どもの実体験と結びつけるのも重要なポイントです。例えば野菜を育てることもその1つ。種まきから収穫までを体験することで、その食材の旬の時期を身をもって体感します。野菜が苦手な子どもであっても、自分で育てることで興味が湧いて食べられるようになる、といった効果も期待できます。
野菜を育てるのが難しい場合は、一緒に買い物に行く、食事づくりを手伝ってもらうといった日常に取り入れやすいことでも構いません。また旬の食材を使ったメニューを子どもに考えてもらうのも良いでしょう。「今はトマトが旬だから、トマトを使った料理で何が食べたい?」など子どもに考えさせることで、季節の食を自分自身の生活と自然につなげていくことができます。
まとめ
季節ごとに豊かな食を楽しめるのは、四季がある日本ならではの文化です。旬の食材が持つパワーや、「家族の幸せと健康を願う」行事食を家族皆で味わい、心も体も満たしていきましょう。